なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 基準が一人歩きする危険

 保岡興治法相は22日の閣議後会見で、無期懲役受刑者を仮釈放する基準を「明確化、客観化、透明化するため省内に勉強会をつくるよう指示した」と述べた。勉強会は保護局、矯正局などの課長クラスで構成。保岡法相は「11月くらいには何らかの成果を出したい」と語った。

 議員連盟「量刑制度を考える超党派の会」(会長・加藤紘一自民党幹事長)が、仮釈放がない終身刑の創設を目指し、次期臨時国会への法案提出を目指している。

 これに対し、保岡法相は「残酷で日本の文化になじまない」と反対しており、無期懲役受刑者の仮釈放の在り方について国民から理解を得たい考えがあるとみられる。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080822/trl0808221328002-n1.htm

 無期懲役を宣告された受刑者にも、仮釈放の制度が適用されること。
 法律上は、10年を過ぎれば仮釈放を受けることが可能だが、実際には30年は服役する必要があること。
 無期受刑者は1000人を超えているのに、毎年、仮釈放が認められるのは数人に過ぎないこと。
 こうした実情については、すでにこの日記でも何度も書いてきたことです。
 それに対して、法務大臣が打ち出してきたのは、仮釈放基準の明確化。もちろん、制度が恣意的に運用されたり、国民によるチェックが不可能な運用はまずいけれども、仮釈放を誰にいつ認めるかは、ものすごく個別性が強い判断だと思います。ヘンに明確化してしまうと、それに合わない受刑者(たとえば事件を絶対に否認したりしている場合には、反省の情がないなどして、仮釈放が認められにくい)は、あきらめて死ぬまで入っておくことを覚悟しなければならなくなります。また、基準が硬直化しないように、いろんなケースに対応できるものにしようとすると、いきおい、基準そのものが曖昧で多義的なものになってしまい、結局、基準なんてないのと同じ、ということになりかねません。
 したがって、基準化そのものにとりあえず反対します。基準を作ることに熱心になるよりも、終身刑に近いとされる仮釈放の運用そのものを見直し、その実績から国民を説得するほうがいいのではないでしょうか。