なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

死刑賛成の産経抄のおかしな理屈

 すでにあちこちでたたかれているので、違った点を。
 産経抄は、宮崎に死刑を執行した法務大臣の姿勢を評価し、次のように結ぶ。

 ▼2年前に刑が確定した麻原彰晃死刑囚も宮崎死刑囚同様、自ら罪を悔い、遺族に謝罪する可能性はゼロに近い。欧州連合(EU)では、死刑を廃止しているので日本も、という出羽(でわの)守(かみ)は、さっさと文明の都、パリあたりに移住されてはいかがか。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080618/trl0806180301000-n1.htm

 この文章に対する批判の多くは、「気に入らないなら日本から出て行け」という結論に向けられています。確かにそりゃひどい。ある人が、「だったら憲法9条が嫌いな人も日本から出て行ったら」と指摘していたけど、そういうことだと思う。
 でも、その一つ前の文章も大いに気になりませんか。「2年前に刑が確定した麻原彰晃死刑囚も宮崎死刑囚同様、自ら罪を悔い、遺族に謝罪する可能性はゼロに近い。」って・・・。なぜこの文脈にいきなり麻原が登場するのか。ま、麻原も早く執行しろと言いたいのでしょうねぇ。だったらそうはっきり書けよ。
 それはともかく、「自ら罪を悔い、遺族に謝罪する可能性はゼロに近い」として、それが執行の理由なんでしょうか。鳩山さんが、個々の死刑囚について、自ら罪を悔やんでいるか、遺族に謝罪しているかを調べて、そうでない死刑囚に執行を命じているのでしょうか。逆に言えば、罪を悔い、謝罪すれば、死刑執行を回避するのでしょうか。わたしは死刑廃止論者であるけれども、もし、真に罪を悔い、謝罪すれば、死刑執行を回避するという制度であったとしたら、死刑存置論に20パーセントくらいは与してもよいと思う。死刑の最大の問題点は、えん罪の場合に取り返しがつかないという点にあると思いますが、そのほかにも、「自ら罪を悔い、遺族に謝罪する」機会を奪ってしまうという点にもあると思うから。
 産経も凶悪犯に死刑をもって臨むのが合理的だと思っているなら、ここで思わせぶりに麻原の名前を出したり、「自ら罪を悔い、遺族に謝罪する可能性」に言及するんじゃなかったですね。所詮はその程度のオツムの持ち主が書いていたということなのでしょうが。