なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 安易な破棄差し戻しは裁判員制度に悪影響を及ぼさないか

 指定暴力団共政会会長守屋輯もりや・あつむ被告(65)=保釈、入院中=による恐喝事件に絡み、被害者の男性に守屋被告の関与を供述しないよう迫ったとして証人威迫の罪に問われた広島弁護士会所属の弁護士関元隆せきもと・たかし被告(68)の控訴審判決で、広島高裁は十七日、無罪とした一審広島地裁判決を破棄、差し戻した。

 楢崎康英ならざき・やすひで裁判長は判決理由で「一審の事実認定は、被害者の供述の信用性の判断に誤りがあった」と指摘した。

 関元被告は二〇〇四年四月、別の事件で拘置中だったこの男性に接見。守屋被告の前の会長名を出し「事件は全部死んだ四代目のことにしてもらえないか」などと迫ったとして起訴された。

地域・写真ニュース | 中国新聞アルファ

 関元弁護士を知る立場の人間なので、事実関係に関するコメントは差し控えますが、もともと「威迫」するようなタイプの人ではない(と外目には写る)んですけどね。
 それはともかく、高裁は、原審の「供述の信用性の判断」の誤りを指摘しています。信用性の判断、というのはそれだけ難しいということです。
 もし、裁判員制度が導入され、この事件が対象事件であったとしたら、高裁は同じ判断をするのでしょうか。差し戻されると、また違う裁判員を選び直し、また裁判員裁判をしなければならなくなります。そのとき、裁判員は、まったく白紙の姿勢で公判に臨むわけにもいかず、難しい判断を迫られることになります。
 いま、裁判所は、1年後に迫った制度の実施を控え、それこそ「イケイケ」で準備を進めていますが、裁判員制度控訴審のあり方などについても、地道に検討していく必要があるのではないでしょうか。