なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 ストーカー裁判官の犯罪と裁判員裁判

 女性の携帯電話にメールを送りつけてストーカー行為をしたとして、山梨県警は21日、宇都宮地裁判事、下山芳晴容疑者(55)=東京都文京区千石3丁目=をストーカー規制法違反の疑いで逮捕した。

 生活安全企画課の調べでは、下山判事は今年2月19日から3月19日にかけ、山梨県内に住む知り合いの20代の裁判所職員の携帯電話に「今度いつ会えるかな」「こんばんは。今、何しているの」などという文面のメールを十数回にわたって送りつけるストーカー行為をした疑い。

http://www.asahi.com/national/update/0521/TKY200805210235.html

 裁判官って、仕事を家に持って帰って起案するなど、超多忙な毎日を送っていると聞いていましたが、どうもそうでもないんですね。被害者は裁判所職員の女性。いったい、どうやって彼女の携帯メールアドレスを知ったのかも気になります。裁判官が裁判所の職員にストーカーまがいのことをするというのも、前代未聞・・・。
 さて、ちょうどあと1年後、つまり平成21年5月21日から裁判員裁判がスタートします。ストーカー規制法は当面、裁判員裁判の対象事件ではないですが、裁判官や裁判所職員の犯罪については、どんな事件であっても裁判員裁判にするという法律はできませんかね。現在の制度のままでは、裁判所関係者の事件であっても、裁判するのは同じ裁判所の仲間なわけで、これではとても司法の信頼は得られそうにないと思います。
 また、この事件に関し、ピントの外れたコメントをしているのは大谷昭宏氏。

ジャーナリスト、大谷昭宏さんの話 「くしくも裁判員制度の実施まであと1年という日に裁判官が逮捕されたというのは、驚きの一言に尽きる。性犯罪や女性に対する事件で逮捕される裁判官が出るということはストレスに対するケアはきちんとされているのか疑問がある。問題のある訴訟指揮も指摘されており、国民からすれば、裁判員として参加したら偶然、変な裁判官と一緒だったでは済まされない。裁判官のストレスに対するケアがなされているのか、行動の不審な裁判官がいないかチェックする必要もある」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080521/crm0805212010026-n1.htm

 この人、気は確かなんでしょうか?
 性犯罪や女性に対する犯罪とストレスを結びつけ、裁判官に対するストレスのケアを求めています。性犯罪はストレス解消のはけ口なんでしょうか。ストレスを抱えている人は、性犯罪に走ってしまうのでしょうか。そんなことはないでしょう。格差社会のいわれている現在、多くの人がストレスと戦って生きています。それでもみんな、性犯罪など起こすことなく、まじめに生活していますよ。裁判官だってそうです。ほとんどの裁判官はストレスを溜めながら生活しているのではないですか。大谷氏の論理で行けば、裁判官のほとんど、国民のほとんどは潜在的な性犯罪者になりかねません。裁判官のストレスに対するケアがきちんと行われていたなら、下山裁判官の犯罪は防止できたとでもいうのでしょうか。
 今更いうまでもなく、性犯罪やストーカーはれっきとした犯罪です。単なるストレスのはけ口などではありません。人を裁く役割である裁判官の犯罪については、もっと厳しい非難が向けられるべきだと考えます。この問題を、裁判官のストレスがどうこうというレベルで片付けようとするのは、著しく本質を見誤った議論としかいえないのでは。
 大谷さんもストレスが溜まっているのかもしれないですね。