なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 秋田2児殺人事件の判決は妥当

 秋田県藤里町の連続児童殺害事件で、畠山鈴香被告(35)に無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した秋田地裁公判は09年春スタートの裁判員制度をにらんで迅速に進んだ。一方で、公判に空白がないよう審理と並行した精神鑑定の重要部分が判決で採用されず、量刑判断のよりどころの一つとされた被告の「心の解明」が十分とはいえず、課題も残した。

http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/03/20/20080320ddm041040040000c.html

 「求刑は死刑・判決は無期」という限界的事例の判決になりました。大騒ぎの余韻が抜けきらない、例の光市母子殺害事件も(現在までは)同様のパターンでした。被害者が2名という点でも共通しており、このあたりの司法判断の難しさが窺えるところです。
 本件で記憶に新しいのは、娘を殺していた被告人が、事故死扱いされたことにわざわざ異議を唱え、「娘は殺されたのだ」と訴えていたこと。こうした行動は、どう考えても不合理であり、精神状態の不安定さを感じずにはいられないところです。判決が死刑を回避したのも、理解できるように思います。
 ちなみに、裁判所は判決に付言して、「仮釈放は慎重に判断すべき」などという意見をつけたとか。気持ちは分からないではありませんが、仮釈放を認めるかどうかは、その時点での本人の態度や環境を含めた総合的な判断であって、裁判所が安易に口をはさむべき問題ではないでしょう。
 また、検察官が控訴するのではないかとささやかれており、おそらくそうするのでしょう。せっかく裁判員制度や公判前整理手続きを行って迅速化を図っても、このように無限定に検察官控訴が認められたのでは、迅速化策をとることが無意味になりかねません。そろそろ、検察官控訴を制限する方向での議論も必要だと思います。