なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 ネット上の名誉棄損に新判断 東京地裁で無罪判決

 インターネット上の書き込みが刑法の名誉棄損罪に当たるかどうかをめぐり、東京地裁は29日にあった判決で「ネットならではの基準で見極めるべきだ」とする判断を示した。波床(はとこ)昌則裁判長は会社員の男性(36)の公判で「男性はネット利用者として要求される水準を満たす調査をし、書き込んだ事実を真実だと信じていたので、犯罪は成立しない」などと述べ、無罪判決(求刑罰金30万円)を言い渡した。
(中略)
 男性は、飲食店グループを経営する企業と宗教団体が一体であるような文章をホームページに記載したとして、この企業に刑事告訴され、東京地検は04年に在宅起訴。並行して、民事の損害賠償訴訟も起こされ、77万円の支払いを命じた敗訴判決が最高裁で確定した。

http://www.asahi.com/national/update/0229/TKY200802290352.html

 民事で敗訴したものの刑事では無罪。一見、奇異に見えますが、これはこれで当然なのではないでしょうか。
 刑事の有罪判決というのは、その人に有罪(=前科)のレッテルを貼り、犯罪者として扱うということです。そうしてみると、刑事事件として有罪に値する行為というのは、相当に悪質なものに限られるべきです。専門的な用語でいえば、「可罰的違法性」なんてことを言ったりしますが、軽微な事件は罪に問うべきではない、という考え方です。
 この判決は、ストレートにこうした考えを適用したものではありませんが、根底にあるのは同様の思考なのでしょう。
 ネットでの言論の反論容易性、一般人がネットでの言論から受ける印象評価など、ネット界の特殊性に配慮したいい判決だと思います。この程度の書き込みで刑事罰まで科そうというのは明らかに行き過ぎだし、たまたま見つかって処罰されるというのは、あまりにも不公平だと思うので。
 検察官も控訴をしないで欲しいものです。