なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 社会奉仕命令の導入の条件

 政府は、裁判の判決で懲役刑などの執行を猶予する条件として、公園の清掃や落書きの消去などを無報酬で行うことを命じる「社会奉仕命令」を導入する方針を固めた。

 実刑と執行猶予では大きな差があり、中間的な処遇が必要と判断した。新たな選択肢が加わることで執行猶予の判決が増え、刑務所の過剰収容に歯止めをかける効果も狙っている。政府は2008年中にも、刑法と刑事訴訟法の改正案を国会に提出することを目指している。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080107it01.htm?from=navr

 記事に指摘があるとおり、実刑と執行猶予とでは、その受ける不利益の程度に大きな差があったのは事実です。また、最近の厳罰化の影響で刑務所が過剰収容状態になっていることもそのとおりです。
 では、こうした社会奉仕命令の制度の導入に無条件で賛成するかというと、それがまた微妙なところ。
 ひとつは、その「社会奉仕」の内容がはっきりしないこと。公園の清掃や落書き消しをどの程度やればよいのか。回数や時間がわからないと是非の検討のしようもないので。また、社会がそれを受け入れるかどうかという問題もあります。一般人がたまたま公園を通りかかったとして、社会奉仕命令を受けて清掃活動をしていることが、その一般人にわかっちゃうのかどうか。わかるとすると、たまたま知人が通りかかったりすることもあるわけで、プライバシーの観点からも問題が出てきます。さぼらずにやっているのかどうかを、誰がどう監視するのか?
 また、この記事では、従来、実刑判決を受けていた人が、社会奉仕命令の導入で刑務所に行かなくてもよくなるような書き方がしてありますが、そのような理想的な展開になるのでしょうか。従来は、単なる執行猶予で済まされていたような軽微な犯罪まで、社会奉仕命令を強制されるようなことになる懸念はありませんか?
 もともとこの社会奉仕命令の制度の検討は、死刑執行を回避した杉浦法務大臣の時代に始まったものです。これを、死刑の機械的執行などをぶちあげる鳩山法務大臣のもとで導入しようというのは、やはり厳罰化を目指しているのではないかと勘ぐらざるを得ません。