なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 検閲社会への第1歩か

 水着姿の18歳未満の少女をモデルにしてわいせつなDVDを製造したとして、警視庁少年育成課は児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、東京都豊島区西池袋の出版社「心交社」チーフプロデューサー、有金滋青容疑者(34)=埼玉県桶川市=、世田谷区上北沢のビデオ製作会社「LLC」社員、春山弘文容疑者(38)=江東区木場=ら4人を逮捕した。

 法人としての2社も同容疑で近く書類送検する。

 一部でも着衣を付けた映像を児童ポルノと認定したのは全国初とみられる。

 同課は「内容を総合的に判断した」としている。有金容疑者らは「撮影はしたが、児童ポルノには該当しない」と供述しているという。

 調べでは、有金容疑者らは2月1〜3日、インドネシア・バリ島で、当時17歳だった都内の女子高生の過激な水着姿を撮影し、DVDを製造した疑い。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071016/crm0710161246013-n1.htm

 このような少女の水着写真集は、ときどき週刊誌でその過激さが話題になっていましたね。
 中身を知らないで言うのも気が引けますが、いちおう水着であるなら、「児童ポルノ」として逮捕までするのは行き過ぎなんじゃないでしょうか。18歳未満のアイドルの水着写真集だってポルノなんですかね。どこまでがポルノでどこからがポルノでないのか、その線引きははっきりしておかないと、「総合的に判断」という名の恣意的な判断を招くことになりかねません。
 もちろん、児童ポルノ全般について言えば、それがその児童にとって深刻な問題であることは当然だし、児童を利用して利益を得ようとする周囲の大人の行動も、非難されて当然だと思います。
 しかし、社会的あるいは道徳的に非難の対象となるかどうかという問題と、刑事罰を受けなければならないかとはまったく別の問題です。こういう微妙なケースでは、在宅で取り調べて起訴するなど、もう少し穏当なやり方もあると思いますね。
 それにしても、先日、奈良地検が、少年事件の調書をライターに見せたという容疑で医師を逮捕するなど、当局の言論・表現に対する過度の干渉は目に余るものがあります。逮捕に先立つ捜索で資料も押収されているわけだし、医師が簡単に逃げ隠れもしないことは明らかでしょう。明白なみせしめの逮捕としかいいようがありません。
 言論や表現に関して、こうしたみせしめの逮捕が横行する社会の先にあるものは、監視社会であり検閲を当然とする社会の姿なのではないでしょうか。「少年のプライバシー」、「児童の健全な成長」といえば誰もその理念に反対することはできません。当局が少年の育成にそこまで熱心であるなら、少年法を改めて厳罰化しようなどと考えるのは、自己矛盾なのではないでしょうか。
 要するに、当局としては、とりあえず世論の反対がなさそうなところから徐々に規制を強化していき、自由な言論・表現を押さえ込んでいこうとする野望があるのではないかと勘ぐりたくなってきます。