なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 こんなときくらい実名を

 法務省は9日、大臣官房に勤務する40歳代の男性職員(検事)を同日付で戒告処分にしたと発表した。職員は、東京都内で酒に酔って通行人を傘で殴ったとして4日に暴行容疑で書類送検され、9日付で不起訴処分(起訴猶予)になった。被害者にけがはなかった。

 同省によると、この職員は2日午前0時15分ごろ、焼酎4〜5杯程度を飲んで自宅に歩いて帰る途中、後ろから自転車で走ってきた20歳代の男性の体と持っていた傘が接触したことから口論になり、傘で男性の顔や肩を数回殴打したという。

 職員は大臣官房の管理職ポスト(課長補佐級)に就いていたが、事件を受けて大臣官房付に移された。同省は「現職の職員がこのような問題を起こして誠に申し訳ない」としている。

http://www.asahi.com/national/update/1009/TKY200710090462.html

 なんか処分を決めるのが異常に早くないですか?
 事件が起きたのが2日で、4日には書類送検。そして9日で起訴猶予処分ですか。6日から8日までは3連休ですから、実質5日で簡単に起訴猶予。こんなこと一般人だとあり得ないですよ。しかも、傘という凶器まで使っているのですから。
 以前にぼくが扱った刑事事件では、傘を振り回して相手方の顔に全治5日の軽傷を負わせただけで「傷害罪」でした。今時の医者は、全治5日より軽い診断書はまず書かないから、実質的にはもっとも軽傷といえる部類でした。被害者を証人に呼んで尋問しましたが、医者には被害当日に行っただけで自然に治り、もちろん、傷跡なんてありません。そんな事件でも、長期間身柄を勾留されて裁判になることが多いのです。
 ところが、この検事さんは、あっという間に処理されて不起訴。普段は、弁護人に対して、「被害弁償はどうなっているのか」とか「家族の受け入れ態勢が・・」とか言いたい放題言ってなかなか処理をしないくせに、さすがに身内が犯罪者となると処理が早いですね。他の事件もこのくらいスピーディーに(かつ最大限の甘い処分で)やって欲しいものです。
 しかも、国家公務員としての処分も、これまたスピーディーにもっとも軽い「戒告」処分。おまけに検事の実名も公表されないというのでは、他の公務員との不均衡も顕著。今や、酒気帯び運転をしただけで、下手をすると新聞に実名が報道され、すぐに免職になる世の中です。凶器で人を殴りつけておいて、こんな処分はどうかしていると思いますがね。
 鳩山法相も、刑務所の名前にけちをつけたり、死刑の自動執行を唱えるくらいなら、自分のところの不良検事も自動的に処分するくらいのことを唱えてみたらいかがでしょうか。