なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 橋下弁護士の会見が楽しみだ

 山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審で、殺人、強姦(ごうかん)致死、窃盗の罪に問われた当時18歳の元少年(26)の弁護団に加わる弁護士4人が3日、テレビ番組内で懲戒処分を視聴者に呼びかけられて業務を妨害されたとして、大阪弁護士会所属の橋下徹(はしもと・とおる)弁護士を相手取り、1人当たり300万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こした。

 訴えたのは、広島弁護士会所属の足立修一、今枝仁の両弁護士ら4人。今枝弁護士によると、橋下弁護士は、5月27日に放映された関西の民放テレビ番組で、懲戒処分を弁護士会に求めるよう視聴者に呼びかける発言をした。その後、広島弁護士会には4人の弁護士の懲戒処分請求がそれぞれ300通以上届き、対応に追われるなどして業務に支障が出たという。

 橋下弁護士の所属する芸能事務所は「送達された訴状を確認次第、至急、橋下本人が会見を開いて対応について説明する」としている。

http://www.asahi.com/national/update/0903/OSK200709030032.html

 実際に提訴したようです。
 マスコミは訴状までは読まずに記事を書いているんでしょうね。
 さて、提訴予定が報じられた際のネット会の反応は、予想どおり、弁護人に厳しいものでした。いわく、「橋本弁護士は、懲戒請求という方法があることを教えてくれただけ」、「訴えるなら、懲戒請求をした本人に対して行うべき」、「提訴という方法をとった口封じ」など。
 橋本弁護士の責任を考えるうえで、次のような見解があり得ると思われます。
1)橋本弁護士は、法的に誰でも可能とされている懲戒請求という制度が存在することを、客観的に告知したに過ぎない。制度の紹介をしただけであって、実際に懲戒請求をするかどうかは個々の視聴者が判断したこと。したがって、虚偽の説明も何もしていない橋本弁護士には責任がない。
2)今回は、制度の紹介だけではなく、実際に光市母子殺害事件という具体的な事件について、弁護団の方針に問題があると指摘して、具体的に懲戒を呼びかけている。弁護士が、個々の事件について具体的に懲戒請求を呼びかけるにあたっては、弁護団の行為が懲戒事由に該当すると信じる相当の根拠がなければならない。橋本弁護士は、そうした根拠もないことを知りながら、不特定多数の視聴者をあおり立てたものであって、そこには故意または過失がある。
 おそらく、橋本弁護士は1)の見解を会見で述べるのではないでしょうか。
 ただし、たとえば芸能レポーターやコメンテーターが懲戒請求の説明をする場合と、いくらお調子者とはいえ、それなりに著名な弁護士が懲戒請求の説明をする場合とでは、おそらく、そのときに払うべき注意の内容も異なってくるはずだし、コメントすべき内容も差異が出てくるものと思われます。そうした特殊性をどこまで裁判所が重んじるかが、この裁判の分かれ目のような気がします。