なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 刑務所における医師不足とその資質低下

全国に75か所ある刑務所・拘置所のうち、20か所の常勤医が4月1日現在で定員割れとなり、1人もいない刑務所も8か所に上ることが法務省矯正局のまとめでわかった。

 2004年4月に新たな臨床研修制度が導入されてから、医局勤務医が少なくなった大学が医師派遣を取りやめるなど、一般病院と共通する問題も背景にあるとみられている。

 刑務所・拘置所75か所の常勤医の総定員は226人だが、欠員は28人と1割以上も不足している計算になる。法務省組織規程で各刑務所・拘置所に医師である医務課長1人を常駐させるよう定めているほか、各施設は収容人数などを基に定員を決めている。しかし、定員3の千葉(千葉市若葉区)、定員2の長野(長野県須坂市)両刑務所などでは、常勤医が1人もいない。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070803-OYT8T00217.htm

 刑務所の医務室はものすごく忙しいところです。理由はいくつもあります。
 まず、医師の人数が少ないのに、受刑者は高齢化して体の弱い人が多いため。
 また、医療は刑務所の予算でまかなわれるため、医師は、社会であれば文句なく認められる治療でも、なかなか施しません。そのため、症状が慢性化して、なんども医務にかからなければならなくなるというスパイラル。受刑者は医師に不満を持ち、診療の機会にそれをぶつけるので、当然、医師もモチベーションが下がりまくり。かくして、本来であれば、信頼関係で結ばれるはずの医師と患者が、あたかも刑務所における刑務官と受刑者のような上下関係に置かれることになります。
 これでは、刑務所の医務室に優秀な人材が集まるはずはなく、こういってしまっては身もふたもありませんが、刑務所に勤めている医師には人間性に問題のある人も少なくありません。でも、そんなことを言って辞められてしまうと、今度は後任に医師を捜すのが難しくなるため、誰も医師に意見ができない状態になります。
 こういう負のスパイラルを是正するためには、一つは予算の制約をなくして十分な医療が提供できるようにすること、忙しさに見合った給与を出すこと、美祢の刑務所でやっているように、一般人も診療に訪れることができる診療所形式にすることなど、いくつかの改善策があるはずです。
 現状のリポートとしてはよくできた記事なのですが、あと一歩の提言まで読みたいと思いました。