なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

世に放たれた殺人犯のその後について

id:crystallizerさん いらっしゃいませ。レス遅くなりました。
 いろいろ考えさせられるご指摘でした。
 凶悪な殺人犯に科せられる刑罰は、次の3つです。
1 死刑
2 無期懲役
3 有期懲役(被害者1名の場合、懲役12年くらいが相場?)
 さて、crystallizerさんは、殺人犯が出所してまた殺人事件を起こした場合を懸念されています。1の場合、殺人犯は処刑されますので、そうした事態は起こりえません。2の場合、仮釈放で出た場合には、そうした事態が起こりえますが、実際には仮釈放自体が稀です。これまでもそうした事態はほとんどなかったし(もちろんゼロではない)、今後も少ないでしょう。再犯が懸念されるとすれば、3の場合です。彼らは、有期懲役ですから、反省しようがしまいが、更生したと見られようが見られまいが、満期が来れば必ず出所します。少年の場合も似たようなもので、どこかで必ず出所します。こうした場合、再度の事件が起きる可能性があります。
 そうしてみると、死刑を廃止してもしなくても、crystallizerさんが懸念するような再犯問題は解消されません。crystallizerさんの心配を解消するなら、殺人犯は全て死刑か無期懲役にして、絶対に刑務所から出さないということにしなければなりません。圧倒的多数を占める有期懲役の殺人犯は、いつかは必ず社会復帰するのですから、それを無くせということになるでしょう。
 繰り返しますが、彼らには「更生」や「反省」ということは考慮されません。満期が来れば、更生してもいなくても、釈放されるのですから。そして、その人が「更生」してくれるのかくれないのか、それは刑務所当局の人間にも分からないことです。釈放された後の生活まで、彼らが面倒を見てくれるわけではないのですから。
 そうすると、刑務所を出たあとの再犯防止の問題は、国家全体をあげて取り組むべきプロジェクトということが分かります。住居や生活はどうするのか、仕事はどうするか。暴力団をきちんと脱退するのか。犯罪を犯しそうな様子はないのか。たとえば、あの小林薫のように、刑務所を出たあとにエスカレートする奴もいるのです。こうした再犯防止プロジェクトを、国が、国家の予算で取り組む必要があります。
 刑務所から出すということは、ご指摘のようにある意味で、とても危険なことです。国家が本気で取り組むのか取り組まないのか。取り組むことについて国民的なコンセンサスは得られるのか。問題はそこにあるような気がします。死刑廃止論をとるのか存置論をとるのかは別にして、そうした対策を考えていくことが必要だと思います。
 再犯率が下がらない現状では、廃止論者にしても、そうした議論を抜きにして抽象的に死刑の廃止を訴えるだけでは、なかなか議論が浸透していかないような気がしますね。