なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

「それボク」と一緒に

死亡推定時刻 (光文社文庫)

死亡推定時刻 (光文社文庫)

 ミステリとしては一本調子だし、あっと驚くようなどんでん返しも無く、胸がすくような活劇シーンがあるわけでもなく、誘拐事件の発生、捜査、裁判と淡々と進みます。厚い本ですが、一気に読めます。
 この本の売りは、圧倒的なリアリティ。著者は現役の法律家ということですが、おそらく弁護士なのでしょう。その生態についても、それなりに正確に書かれています。σ(^^)は、この日記で、刑事司法が絶望的な状況だと繰り返し述べていますが、まさにその絶望的な状況がこのミステリからもよく伝わってくると思います。弁護側がいくつもの証拠を積み重ねて訴えても、それでも裁判所が耳を貸さないとしたら・・・。
 「それボク」などで刑事裁判のあり方に興味を持ってもらった方には、もう一歩進めて考えていただく素材としても、この本を一読してもらいたいと思います。