なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

Winny有罪判決の危ない論理

 asahi.comの記事より。
http://www.asahi.com/national/update/1213/OSK200612130057.html

 ウィニー2は、それ自体はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。

 結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様によると解するべきである。

 前半部分でそれなりに「分かってますよ」というような顔をしつつ、後半部分でばっさり斬る、典型的な「八方美人」判決ですね。この判決の論理でいけば、「現実の利用状況」が違法使用がほとんどであり、それを知りつつ提供したら、幇助犯が成立するということですね。たとえば、「画像安定化装置」なんて名前でコピーガードキャンセラーが売られていますが、あれも立派な著作権法違反になりそう。DVDのコピーガードを外すソフトやwinnyを紹介する雑誌もアウト。
 結局、技術やら製品やらは、使い方次第でどのようにでも変化するわけです。正犯者から依頼されたり、具体的な正犯者の行動を認識していたような場合ならともかく、不特定多数の人が手に入れられるように流通に置いただけで幇助犯が成立するような解釈は、処罰の外延を限りなく拡大するものだと思いますよ。それに、この判決の論理だと幇助的行為をした者の「認識」、「主観的態様」を重視するわけで、捜査機関としては、いきおい、片っ端から逮捕して勾留して締め上げて、自白を迫るという捜査方法をとることになります。金子さんも、最初はそうして自白をとられてしまったわけだし。
 この判決が一般化するのは、ちょっと恐ろしいことです。