なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

北森鴻の連作短編集

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

 三軒茶屋の路地裏にあるバー「香菜里屋」に集う常連たちが巻き込まれた謎を、バーの主人が推理して解決するという趣向の連作短編集です。こうした企画は、「安楽椅子探偵」ものといわれています。要するに、探偵役は、ずっと同じところに座っていて、情報を集めてくるのは別の人、というものです。この文庫の解説にも書かれていますが、同様の趣向のものとしては、巨匠・鮎川哲也の「三番館」シリーズや、SF作家・アイザック・アシモフが手がけた「黒後家蜘蛛の会」シリーズが有名ですね。σ(^^)は、そのどちらも全部読みましたが、「香菜里屋」シリーズもそれに並ぶ出来といって差し支えないようです。
 とにかく、この種の読み物では、いかに登場人物をうまく設定して書き込むかが、シリーズとしての性格を決めるといっても過言ではありません。「香菜里屋」のマスター・工藤は、いささかおとなしく、強烈な個性を持っているわけではありませんが、押しつけがましくない感じで、好感度の高い人物として描かれています。
 ミステリとして読むと、ちょっと物足りなかったり、単なる推測の域を出ないものなどもありますが、そういった枝葉末節にこだわるよりは、自分も「香菜里屋」の常連であるような気分になって読んでいくのがよいのでしょう。
 この本はシリーズ第一作ですが、すでに三作まで書籍になっています。引き続いて読んでいこうと思います。
 ちなみに、鮎川哲也アシモフのシリーズもここで紹介しておきます。
太鼓叩きはなぜ笑う (創元推理文庫)

太鼓叩きはなぜ笑う (創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)