なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

「支援」という名の福祉切り捨て

 シンポジウムで、あるパネラーが指摘したことが、最近の情勢をもっとも端的に表しています。
 戦後、日本国憲法ができて、「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されました。国家は、国民に生存権を保障し、いわゆる福祉国家への道を歩み始めました。ところが、最近、政府は、この「保障」という言葉を使わず、「支援」という名前に変えてきました。「障害者自立支援法」などという法律もできました。
 変わったのは、もちろん名前だけではありません。従来は、国による「保障」だったものが、「支援」という名に変わるとともに、そこに持ち込まれたのは、「自己責任」という言葉。それから福祉サービスとの「契約」などという概念。もともと社会的な弱者である障害者や老人、そして生活保護を必要とする人たち。政府は、こうした人たちに「自立」を求め、そして契約社会へと放り出します。かれが対等な当事者として、事業者と契約を結ぶことができるでしょうか。真の意味での自立が可能なのでしょうか。
 いま、景気はやっと回復し始めたといわれています。しかし、そうした景気回復は、こうした弱者への保障を切り捨てた上に成り立っている繁栄であるということを、忘れてはならないと思います。