なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 懲役の代わりに社会奉仕 法相「代替刑」を諮問へ

 杉浦法相は、新しい拘禁制度の導入について26日の法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する。刑務所に収容する懲役・禁固刑の代わりに社会奉仕命令など「代替刑」を科せる制度の創設に向け、その是非を問う。判決が確定していない被告など未決囚をめぐっては、容疑を否認すると長期間身柄拘束が続くことから「人質司法」とも批判されている保釈のあり方を改善するための制度づくりも検討する。

 刑務所の収容率(04年末)は118%に達し、独居房に2人が暮らす例も珍しくない。法務省は、こうした過剰収容を改めるとともに、出所者がきちんと社会復帰できるようにして再犯防止につなげるため、刑法や刑事訴訟法の改正や新規立法も視野に入れる。

 「代替刑」としては、例えばごみ拾いや草刈りなどの社会奉仕命令のほか、薬物犯罪者なら、再犯に陥るパターンや薬の怖さを気づかせる薬物処遇プログラムを受ける命令が想定されている。

 こうした場合、受刑者に一定の行動の自由を認める一方、専用の宿泊施設や自宅への居住を義務づける▽全地球測位システム(GPS)を装着させて行動を監視する――などが想定されている。命令に従わなければ、刑務所に行くことになる。

 いい考えだと思います。さすが杉浦さんは弁護士出身だ。やはり受刑者や被告人と日常的に接して、生の声を聞いている弁護士でなければ、こうした発想は出てきにくいと思う。とくに、犯人を捜査の客体としてしか見ていない検察官や、有罪率99.9%に何の疑問も持たず、過去の前例とかバランスだけで判決を言い渡すような裁判官には、こうした抜本的な改善の提言は難しいだろう。
 もちろん、社会奉仕命令が有効に作用する被告人と、そうでない被告人と、いろいろいると思います。それは、たとえば朝、自発的に起きられる人と、親に起こされるまでずっと寝ている人などいろんなタイプがあるように、刑罰の効果も人によってさまざまだからです。ただ、こうしたオプションが増えること自体は歓迎すべきことで、実際にそうした社会奉仕命令を出すかどうかは、裁判官が自分の頭で考えればいいことだと思います。GPSだって、それと引き換えに刑務所収容を免れられ、かつ、本人がそれを望むなら、つけて監視すればいいと思いますよ
 さて、他方、アメがあればムチがあるといいますか、

 また、現在は未決囚のほとんどが保釈されず、起訴後、一審の判決までに保釈される「保釈率」は04年で約13%と低かった。

 刑事訴訟法では、請求があれば保釈するのが原則。ただ「被告が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」などは例外で、裁判所はこの条項に当たるとして保釈を認めない例が多い。こうした現状を背景に、例えば、保釈された後に口裏合わせなどをしたら非常に重い刑罰を科す▽保釈後、公判段階になって認否を覆したらペナルティーを科す――などを検討。「裁判官が保釈しやすい制度設計」(杉浦法相)をめざす。

 保釈率が低いのは、記事が指摘するように、裁判所が及び腰だからで、まずそうした裁判官を教育しなおすことから始めるべきですね。「裁判官が保釈しやすい制度設計」を考えてやるというのは、本末転倒ではないでしょうか。
 とりわけ、保釈後、公判段階で認否を覆したらペナルティーなんて、最低の発想です。検察官の証拠は、公判が始まらないと(つまり保釈が決定した後ということ)弁護人や被告人には開示してもらえないわけで、それを見てから認否を決めればいいだけのこと。意見を変えたらペナルティーというのは、およそ近代の刑事手続きとは思えないですね。それをやるなら、起訴時にすべての証拠を開示するシステムにすべきであって、今のように、検察官が自分に不利益な証拠を隠すことも自由自在という状況のもとで、上記のような制度を置くことは、百害あって一利なし、だと思います。
 原則に戻って、きちんと保釈を認め、何か違法なことがあれば保釈金を没収するという運用で差し支えないのではないでしょうか。