なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

できの悪い帯

narushisu2006-05-26

現代殺人論 (PHP新書)

現代殺人論 (PHP新書)

 帯には、「人間はどこまで残虐になれるのか?」とか「犯罪精神医学で分析する異常人格者の素顔」などと妙に刺激的なフレーズが並んでいますが、内容はきわめてオーソドックスで、新書という形式にふさわしいものです。
 印象に残った著者の記述をいくつか引用しておきます。

・最近、性犯罪の重罰化が進んでおり、私もそれに賛成ではあるが、一方では長期刑に服することを避けようとして、被害者を殺害する者も多くなる可能性のあることは指摘しておきたい。(85)

・情性欠如者が人間としての共感性に乏しく、他者の生命や感情に無頓着であることはすでに述べた。こうした傾向は、本人自身にも向いていて、自らの将来の運命についても無関心ということになるのである。他者を尊敬しない人は、自己を大切にすることもできないのである。(172)

・現代において、精神障害者であっても健常者と同じように責任をとらせろと声高に叫ぶ人の多くは、精神医学の知識はほとんどないであろう。ましてや、重症の障害のある人と会って話をしたことなどないはずだ。知識なくして発言する人があまりにも多いところに、議論が混乱する最大の原因があるのだろう。(206)