なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

裁判官の退官

 例の光市母子殺人事件の件をあと少しだけ書こうと思います。
 どうやら、世の中の「識者」といわれる人たちは、最高裁の裁判長が5月に定年退官するから、それを見越して訴訟活動をする弁護人の行動は、行き過ぎであると批判するようです。ですが、5月といえばあと2カ月ちょっと。それまでに審理を終えて判決を出そうというのは、むしろ裁判所の暴走ではないかという危惧さえ持ちます。
 あまり知られていないことかもしれませんが、最高裁がスピード判決をすることはほとんどありません。むしろ、長時間、ほったらかしにされ、問い合わせても「まだ審理中です」とか言われ、判決の予定日も教えてもらえません。忘れたころになって最高裁から1通の封筒が届き、そこで上告(受理)が退けられたことを知るのです。そんな最高裁の、それも裁判長までやっている人が、退官前にどうしても仕事を片づけようというのは、気持ちはわからないではないにしても、いささか不自然に感じます。だったらσ(^^)の依頼人が上告を受けているあの事件も、さっさと判決してから退官してくれといいたくなります。
 最高裁は、多くの事件を抱えているから、事件の審理が遅くなる。それはやむを得ないでしょう。ですが、普通の事件はそのように、木で鼻をくくったような対応をしておいて、弁護人が準備不足を理由にわずか3カ月の延期を求めただけで憤慨するというのは、普段のご自身の態度をお忘れになっているとしか申し上げようがありません。多くの事件を抱えているのは、最高裁だけではないのですから。
 どうしても退官前に判断をしたいのなら、それこそもっと前倒しで弁論を指定すべきだったのです。退官2カ月前に弁論を指定したのは最高裁です。もともとそういう予定の組み方に無理があったわけではないでしょうか。