なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

「女子トイレ侵入」司法修習生、証拠乏しく釈放(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050126i114.htm

 東京高裁・地裁合同庁舎内の女子トイレに侵入したとして司法修習生が逮捕された事件で、東京地検は建造物侵入容疑で逮捕されていた西川英樹・修習生(32)について拘置期限の26日、「現段階で合理的な疑いを持ち得ない」として、処分保留のまま釈放した。
 西川修習生は昨年12月13日、裁判所内の女子トイレに盗撮目的で侵入したとして今月5日、逮捕された。
 同地検では、<1>個室内に置かれていた家庭用ビデオカメラから指紋が採取できなかった<2>ビデオカメラには数人が映っていたが、西川修習生とは断定できなかったことなどから、「客観的証拠に乏しい」として起訴を見送った。
 西川修習生は釈放後、「高圧的な調べを4時間にわたって受けて、動揺してしまい、ありもしないことを言ってしまった。もっと慎重に捜査していただければ良かったと思う」と語った。
 永井紀昭・東京地裁所長の話「処分保留で釈放されたが、捜査はなお継続すると聞いており、今後の捜査の状況を見守りたい」

 以前、紹介した記事(http://d.hatena.ne.jp/narushisu/20050106#p2)の続報です。
 たしか、逮捕当時は、「席を離れるなど修習態度が悪い」とかいって犯人視していませんでしたかね?
 この手の事件は、現行犯でないとなかなか立件が難しいですよね。某元教授みたいに、現行犯で捕まっても抵抗するひともおりますが。
 しかし、この修習生は、今後、修習に復帰して卒業するのだろうか。そうなると任官は無理だから弁護士登録するのかな。複雑な気分といえます。
(追記)
 無実の罪で取り調べを受ける屈辱感や、孤独感などは、きっと体験したことのないわれわれには分からないでしょう。ですが、修習生ともなれば、虚偽の自白をすることがいかに恐ろしいことか、散々教えられるはずです。刑事弁護人が自分の依頼人に教えることの第1は、黙秘権があることや、気に入らない調書には書名・指印をしないという権利があることで、虚偽の自白だけはしないようにアドバイスの限りを尽くす、というものです。西川さんも、このことは十分にわかっていたのではないでしょうか。にもかかわらず、「高圧的な調べを4時間にわたって受けて、動揺してしまい、ありもしないことを言ってしまった」というのでは、法曹としての資質を疑いたくなるのも無理はないのではないでしょうか。まして、同種の事件で元教授がつかまったりして、その無様ともいうべきいいわけの姿を目にしているはずで、自白することがどういう事態を招くか、少し考えればわかりそうなものです。
 たとえば、住専問題にからんで逮捕された安田弁護士は、徹底して否認を通し、裁判で無罪を勝ち取りました。安田さんの精神力の強さには感服するばかりですが、わずか4時間の取り調べで動揺して、ありもしないことを言ってしまった、というのは、法律や捜査の手法に精通していない一般の人ならありえても、修習生という立場の人間にはありえないことのような気がしますが。