なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 弁護士が任官をしない理由(つづき)

では、なぜ、弁護士に人気がないのか。その理由を考えてみました。
(1)役所勤めがいや
 もともと弁護士というのは、一匹狼的に生きている人間です。他者から管理されることが嫌いなので、弁護士となることを選んだという性格の持ち主がほとんどです。ですので、裁判所に入って組織の一員となって、というスタンスを毛嫌いしてしまうのでしょう。建前では、裁判官は憲法と良心のみに拘束され、上司にあたる裁判官などの監督を受けないことになっています。もちろん、その建前を貫き通す立派な裁判官もおられますが、最高裁の考え方に背くような判決を出す裁判官は、出世できないという大問題があります。そんな裁判所の風通しの悪さを嫌っているのでしょう(小職もその一人です)。もっとも、充実した福利厚生などは、しがない自営業者から見れば、ウマーなのですが。
(2)所得が低い
 弁護士の収入は自分の努力で決まります。ですので、極端に儲かって長者番付に出る弁護士もいれば、ほそぼそと食べている弁護士もいます。これから弁護士人口が激増しますので、先行きも暗いです。
 ですので、裁判官になると収入が減る、という理由で任官をしないという弁護士は、そう多くはないです。小職などは、おそらく同期の裁判官よりは収入が少ないかと。でも、自由に生活できるというメリットの方を大事にしているのです。
(3)転勤がある
 裁判官は、一つの裁判所に2〜3年しかいません。いろいろな理由があると思いますし、転勤は楽しみの一つという人もいますが、子供の学校のことや、引っ越しの面倒などで転勤を嫌う人も多いです。単身赴任すればいいのでしょうけど。
(4)仕事の整理がつかない
 これが一番の理由だと思います。任官するということになると、弁護士としての仕事はできませんから、裁判中の事件などがあれば、誰かに引き継いでもらわなければなりません。それを探すのも苦労しますし、弁護士費用をどうするか(すでに貰っているものの一部を渡すとか、報酬が入ってきたらどう精算するかなど)、金の面での苦労も多いです。ならば、ずっと弁護士を続けた方が面倒がない、と考えるのは自然なことです。依頼人に、「裁判官になることになったので、後はよろしく」という態度はとれませんよね。
以上のような理由が複合するから、任官希望者が少なくなるのは当然で、とくに(4)の問題などは、一人の弁護士の努力ではなかなか難しいので、弁護士会とかあるいは裁判所の方で何らなのフォローをして欲しいです。でも、それはそれで、任官しない弁護士から見れば、自分たちの会費が無駄に使われる、といった反発が予想され、難しいです。
 結局、小職の場合、弁護士で食えなくなったらお上に頼ろうかと、不埒なことしか考えていないです(^^;)。