なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

刑罰と抑止力あるいは見せしめについて

 昨日の日記に寄せられたid:popopo_2004さんのコメントに触発されました。
 刑罰が国民に抑止力として作用する。そのことは事実としてあり得ることです。だれしも、刑罰という不利益を受けるのは嫌です。ある人が、犯罪を犯して刑罰を受けるのを目の当たりにする、それを見て、「ああ嫌だな。そういう犯罪はしないようにしよう」と感じるのはもっともなことです。法も、そういう効果を期待しているといえなくもないでしょう。ただし、もし、抑止力を期待しすぎると、「厳罰主義」に陥ります。万引きだって、殺人だって、著作権法違反だって、みんな死刑。そうすれば、抑止力は過度に高まり、だれもwinnyは使わないでしょう。でも、それは正義ではありません(と思う)。犯した犯罪の程度に見合うだけの刑罰しか科してはならない、という原則を守るべきです。抑止力についても、その限度で期待すべきでしょう。
 しかし、「見せしめ」は明らかに間違っています。「見せしめ」というのは、社会に対する警鐘とするために、「ふつうはこれくらいなら処罰はしないけれども、今後のために特に処罰する」という観点を含んでいます。本来、法というのは平等に適用され、同じ行為をしたのであれば、同じ刑罰を受けるのが筋です。したがって、見せしめとして摘発するというのは、摘発されたほうからすれば、「なんで俺だけが」という意識が残ることになってしまいます。これはよくないのではないか、と思うわけです。摘発されなかった方にしても、「あいつは特別だ」とか、「どうせ自分はつかまらない」とか思うのではないですかね。