なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 徳島刑務所暴動事件は、受刑者の逮捕で次のステージへ

 徳島刑務所(徳島市、荒島喜宣所長)で昨年11月、作業中の受刑者が刑務官に暴行、けがを負わせた問題で、同刑務所は9日、傷害と公務執行妨害容疑で、30歳代の男性受刑者を書類送検した。暴行にかかわった他の受刑者についても、今後書類送検する方針。
 同刑務所によると、男性受刑者は他の受刑者と共謀し、昨年11月16日午前9時25分ごろ、刑務所の工場で、作業中に刑務官2人の顔面を殴るなどし、1週間のけがを負わせた疑い。
 同刑務所は暴行の原因については、調査中としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080109-00000083-jij-soci

 徳島新聞には受刑者の実名も報道されているし、なぜこの人が逮捕されたかという背景についても詳しく書いてあるのですが、なぜか徳島新聞のサイトにはこの記事がupされてないんですよね。というか、徳島新聞は、昨年末まではとても熱心にこの問題を報道していたんですが、今年になってからは関連ニュースがwebに載らなくなっているんですよね。ちょっと心配です。
 さて、刑務所側は、予想どおり、この暴動事件を単純な暴行事件としてとらえて、幕引きをはかろうとしているようですね。まあ、暴動事件を起こしたこと、その場には松岡医師がいなかったことは明らかですから、たとえ受刑者がいくら松岡医師や刑務所医療への不満を取り調べで述べたとしても、検察庁はまったく相手にしないのでしょうね。
 このままでは、最近では珍しい暴動事件も、このまま闇へ葬られ、あるいは自然と下火になってしまう懸念があります。徳島刑務所は、暴動に関わったり、松岡医師を告訴した人たちを、全国の他の刑務所にバラバラに移して、彼らが集団的に行動するのを防ごうとさえしています。姑息で表面的な対応です。
 問題の本質は、刑務所内における医療がまったく不十分なことです。刑務所では、医療の予算が不足しており、刑務所の医師は、いかに医療費を削るのか、そればかりを考えています。その結果、本当に病気の受刑者がいたとしても、その治療は手遅れになるくらい放っておかれるし、この松岡医師みたいな医師に対しても、刑務所当局はなにも意見が言えない環境ができあがってくるわけです。
 いま、刑務所の多くは、高齢者の受刑者が増え、老人ホーム化しているとさえ指摘されています。そんななかで、闇雲に医療費を減らしたり、受刑者の言い分に耳を傾けない医療を続けていては、取り返しのつかない事態が頻発しかねないと考えられます。
 名古屋刑務所事件が起きて刑務所改革の第一歩が築かれたように、徳島刑務所事件が、刑務所の医療改革に一歩を踏み出すきっかけとなって欲しいものです。